特別講演・シンポジウム等
本大会では常任理事会企画にて、大坊郁夫先生(本学会名誉会員)による特別講演を開催します。大会第一日目(8月21日)の総会後の時間帯となります。ふるってご参加ください。
特別講演
「対人関係のダイナミズムを研究することの魅力と学会の役割
」
講演者 大坊郁夫(北星学園大学・東京未来大学・大阪大学)
司会 三浦麻子(大阪大学)
臨床的な場面での要治療者と治療者との関係に関心を持った経緯から、私は2人間の発言・沈黙の時系列的な経過、視線、身体動作などを、相互作用場面、男女、パーソナリティ特性、親密さ等と関連させて扱ってきました。その後は、コミュニケーションの表現力や解読力のトレーニングに関わるようになりました。
対人コミュニケーションの研究者は、以前も今も多くはありません。それは、分析できるデータを得るまでに膨大な時間とエネルギーを要することが難点なのです。このことは、広く対人行動のプロセスの研究にも当てはまります。
しかし、対人相互作用のメカニズムの持つ面白味は大きい。日々の生活は人とのつながりを多数のコミュニケーションや認知のチャネルを用いて時間経過で展開されています。このような研究が積み重ねられ、人の社会性を明らかにできると考えています。
1949
年に設立された本学会は、三隅二不二先生の牽引力に負ってきました。特に三隅会長時代には学会の組織の活性化、国際化に力を注がれました。それを受け、実社心研
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号の英文号発行、アジア社会心理学会(AASP)の立ち上げ、雑誌(JSPS)の発行がなされました。支出増ともなり、財政上の工夫が必要でした。また、地方の理事を中心とした研究会の奨励、役員の若返り策として現行の役員選出規程改定などがなされました。正しくアカデミック・ボランティアによって学会は成り立ち、会員の賛意とコミットメントによって運営できることを経験いたしました。
人のつながりは個人・社会を動かす重要な力であることは変わりませんが、将来、現在よりも満足した生活ができるかは不明です。生成AIの日常化、人が次第に環境に組み込まれつつある現状を思うと、対象となる変数を明確に規定することも難しくなるでしょう。そのことを解決しながら新たな研究のステージを築くことを期待したいものです。